忙しい毎日の中で、つい睡眠時間を削ってしまってはいませんか?健康づくりにおいて、食事・運動と並んで重要なのが「睡眠」です。睡眠不足は、単なる体調不良だけでなく、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病をダイレクトに悪化させることがわかっています。

睡眠不足が体に及ぼす悪影響

睡眠が足りないと、体の中では以下のようなトラブルが連鎖します。

  • 血糖値の急上昇
    • わずか数日の睡眠不足でも、インスリンの働きが悪くなり(インスリン抵抗性) 、血糖値が下がりにくくなります。
  • 食欲の暴走
    • 食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えます。睡眠不足の翌日に高カロリーな食べ物を欲するのは、脳がエネルギー不足と誤認するためです。
  • 夜間の血圧低下を妨げる
    • 通常、睡眠中は血圧が下がりますが、睡眠不足だと交感神経が優位なままとなり、血管に負担がかかり続け、高血圧を招きます。
  • メンタルの不調
    • 脳の感情を制御する機能が低下し、イライラや不安、落ち込みを感じやすくなります。

「質の良い睡眠」の目安とは?

睡眠時間は一般的に6〜8時間が目安ですが、実際には個人差があります。「睡眠の質」のチェックポイントは以下の3点です。

  • 寝つきがスムーズ
    • 布団に入ってから20分以内に寝つける。
  • 夜中に目が覚めない
    • 夜中に目が覚める回数は0〜1回。
  • 目覚めがすっきりしている
    • 起きた時に「よく寝た」という充足感がある。

質の良い睡眠をとることで得られるメリットは、疲労回復のみに留まりません。深い睡眠で分泌される成長ホルモンは、ダメージを受けた筋肉や血管の細胞を修復・強化し、内臓の疲れを回復させます。生活習慣病の予防、基礎代謝の改善にもつながる好循環が生まれるのです。

カフェインやアルコールは控えめに

良質な睡眠のためには、寝る前の飲み物選びが重要です。

カフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)

カフェインによる覚醒作用は約4〜8時間持続します。就寝への影響を避けるために、夕方以降、特に就寝4時間前からは摂取を控えると安心です。

アルコール(お酒)

アルコールは寝つきを良くしますが、数時間後に分解される過程で交感神経を刺激し、眠りを浅くします。また、喉の筋肉が弛緩することでいびき(無呼吸)の原因になり、結果的に睡眠の質が著しく低下します。

お酒の種類ごとの適正量

厚生労働省が推奨する「節度ある適度な飲酒」の目安は、男性では1日平均純アルコールで約20g程度、女性ではその半分程度とされています。「純アルコール20g」は、酔いの原因となるアルコールそのものの量を計算したものです。

純アルコール20g程度の目安は以下の通りです。

お酒の種類度数の目安20gに相当する量
ビール5%500ml(ロング缶1本・中瓶1本)
日本酒15%1合(180ml)
酎ハイ7%350ml(レギュラー缶1本)
ウィスキー・ブランデー・ジン40%60ml(ダブル1杯)
焼酎25%110ml(0.6合)
ワイン14%180ml(グラス約1.5杯・ボトル1/4)

ビール500ml(または日本酒1合)の分解には、男性で約4時間、女性で約5時間かかります。飲酒は「寝る直前」ではなく、夕食時の楽しみにとどめましょう。また、お酒と同量の「チェイサー」(水)をこまめに飲むことで、脱水による中途覚醒を防げます。

睡眠のための飲酒は、アルコール依存症や脳の萎縮のリスクを高めます。アルコールへの耐性ができて眠れなくなると、さらに飲酒量増加を招く可能性が高くなります。早めに専門機関へ相談しましょう。

脳と体を「睡眠モード」に切り替える

心身をリラックスモードへ導くための工夫を、日常生活に取り入れてみましょう。

アクティブレスト(積極的休養)

日中の活動が少なすぎると、脳が「まだ寝る必要がない」と判断します。また、寝つきが悪くなったり、中途覚醒したりしやすくなります。1日10分程度の軽い有酸素運動やストレッチ、体操などを行うほか、通勤時や仕事中の移動などで、日中から活動量を少しでも増やすことを心がけましょう。

活動量が増えると血流を促進し、単に安静にするよりも疲労回復が早まるほか、夜間の深部体温の低下がスムーズになり、深い眠りに入りやすくなります。 

自宅をリラックス空間に

帰宅後にすぐ部屋着に着替えてリラックスモードに切り替えてみましょう。座りごこちの良いソファーに座ったり、好きな香りを焚いたりなど、ゆっくり過ごす空間づくりをすることで、脳や体に「自宅はリラックスできる場所」であると認識させることができます。

思考をメモ出しして視覚化

翌日の仕事のことを考えすぎると、脳が覚醒してしまい、寝付きが悪くなってしまいます。気になって眠れない時は、思いついたことを「明日起きたら考えること」としてメモに書き出して視覚化すると、脳の覚醒を抑えることができます。

夜遅くの食事、どう選ぶ?

理想の食事時間は、就寝の2時間前までに食事を終えることですが、残業などで食事が遅くなってしまう場合は、「消化の良さ」を最優先にして選びましょう。

  • 温かい汁物・水分
    • 味噌汁やスープ、水分の多い煮物は、胃腸を温め、消化をスムーズにします。具材は豆腐、わかめ、柔らかく煮込んだ大根、かぶ、溶き卵など、消化に良い具材がおすすめです。
  • 良質なたんぱく質
    • 蒸し料理や煮付け、刺身など、脂質が少なくなる調理法のものを選びましょう。茶碗蒸し、サラダチキン、湯豆腐、白身魚の煮付けなど。
  • 主食は軽めに
    • お粥や雑炊は、少量でも満足感を得やすく、胃への負担も少なくなります。野菜や卵の入った煮込みうどんも同様です。

質の良い睡眠のための入眠準備

最後に、スムーズに入眠するためのルーティンを紹介します。

  • 就寝1~2時間前に、少しぬるめ(40℃程度)のお湯にゆっくり浸かる
  • 入浴後~就寝までは、暖色系の照明や低照度の間接照明を使って、光による刺激を減らす
  • 深呼吸をしながら、ゆっくりとストレッチをする
  • スマートフォンやパソコン、テレビは、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制するため、布団に入ったら画面を見ない

質の良い睡眠は、明日のあなたのパフォーマンスを最大化する最高の投資です。まずはできることを一つ、今夜から始めてみませんか。